

品質保証の仕事は?仕事内容や必要なスキル、「品質管理」との違いを解説
2025/08/05
製造業やIT業界で欠かせない職種である品質保証。「品質を保証する」という言葉から何となくイメージはできても、実際にどんな仕事をしているのか、品質管理とは何が違うのか、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
品質保証は、単に製品をチェックするだけの仕事ではありません。製品の企画段階から販売後のアフターフォローまで、幅広い工程に関わりながら、会社の信頼と顧客の安心を守る重要な役割を担っています。この記事では、品質保証の具体的な仕事内容から必要なスキル、やりがいまで、転職を考えている方にも役立つ情報を詳しく解説していきます。
品質保証って結局どんな仕事?製品の番人として働く日常
品質保証の仕事は、製品やサービスが決められた基準を満たしているかを確認し、その品質を顧客に保証することです。しかし、実際の業務はもっと奥が深く、製品が世に出る前から顧客の手に渡った後まで、長いスパンで品質に責任を持ちます。製造業だけでなく、ソフトウェア開発やサービス業など、さまざまな業界で品質保証の専門家が活躍しています。
モノづくりの最終チェックだけじゃない品質保証の役割
品質保証と聞くと、完成した製品を検査する仕事をイメージする人が多いかもしれません。確かに製品検査も重要な業務の一つですが、それは品質保証の仕事のほんの一部にすぎません。
実際には、製品の企画段階から関わり、どのような品質基準を設定するか、その基準をどうやって実現するかを考えることから始まります。原材料の選定、製造工程の設計、検査方法の確立など、モノづくりの全工程において品質の視点から関与していきます。
さらに、製品が市場に出た後も仕事は続きます。顧客からのフィードバックを分析し、不具合があれば原因を究明して改善策を立案。次の製品開発に活かすという、PDCAサイクルを回す役割も担っているのです。
品質保証と品質管理、似ているようで全然違う仕事の中身
品質保証(QA:Quality Assurance)と品質管理(QC:Quality Control)は、よく混同されがちですが、実は視点も業務範囲もかなり異なります。
品質管理は、主に製造現場で行われる活動で、製品を作る過程で不良品が出ないように管理することが中心です。統計的手法を使って工程を分析したり、検査基準を設定したりして、製造プロセスの中で品質を作り込んでいく仕事といえるでしょう。
一方、品質保証はもっと広い視野で品質を捉えます。顧客が求める品質とは何か、それをどう実現し、どう証明するかを考える仕事です。製品企画の段階から販売後のサポートまで、製品のライフサイクル全体を通じて品質に責任を持ちます。
簡単にいえば、品質管理が「良いものを作る」ための活動なら、品質保証は「良いものであることを保証する」ための活動。品質管理は品質保証の一部として位置づけられることが多く、品質保証担当者は品質管理部門とも密に連携しながら仕事を進めていきます。
品質保証の具体的な仕事内容
品質保証の業務は多岐にわたりますが、その中でも特に重要な6つの仕事について詳しく見ていきましょう。これらの業務は相互に関連しており、全体として製品の品質を支える重要な役割を果たしています。
【製品仕様書の作成】品質の基準を決める最初の一歩
製品開発において、品質保証担当者が最初に関わるのが仕様書や規格書の作成です。これは単なる書類作成ではなく、製品がどうあるべきか、何を満たすべきかを明文化する重要な作業です。
過去の製品で発生した不具合データ、顧客からのクレーム情報、市場調査の結果などを分析し、新製品に求められる品質基準を設定します。例えば、耐久性はどの程度必要か、安全性はどのレベルまで確保するか、使いやすさの基準は何かなど、具体的な数値や条件を定めていきます。
この段階でしっかりとした基準を作っておかないと、後工程で「何をもって良品とするか」があいまいになり、品質のばらつきが生じてしまいます。そのため、開発部門や営業部門とも協議を重ね、実現可能で、かつ顧客満足度の高い基準作りを目指します。
【原材料チェック】不良品を未然に防ぐ
どんなに優れた製造工程があっても、原材料の品質が悪ければ良い製品は作れません。品質保証担当者は、仕入先から納入される原材料が規格を満たしているかを確認し、品質証明書を作成します。
具体的には、納入された原材料のサンプルを抜き取り、成分分析や物性試験を実施。データに異常がないか、過去の実績と比較して変化はないかをチェックします。問題があれば仕入先に改善を要求し、場合によっては仕入先の変更も検討します。
また、新しい原材料を採用する際には、事前に徹底的な評価を行います。ラボでの試験だけでなく、実際の製造ラインでテストを行い、最終製品の品質に影響がないことを確認してから本格採用を決定します。
【製造現場との連携】品質を守るための日々の活動
品質保証担当者は、オフィスにこもって書類仕事ばかりしているわけではありません。定期的に製造現場を巡回し、作業が手順通りに行われているか、設備に異常はないか、作業環境は適切かなどをチェックします。
現場の作業者とコミュニケーションを取ることも大切な仕事です。「最近、この工程で不良が増えている」「この作業がやりにくい」といった現場の声を拾い上げ、改善につなげていきます。
また、新しい製造方法を導入する際には、品質への影響を評価し、必要に応じて作業手順書を改訂したり、作業者への教育を実施したりします。現場と一体となって品質向上に取り組むことが、品質保証の重要な役割なのです。
【クレーム対応】会社の信頼を守る最前線
製品に関するクレームが発生した場合、品質保証部門が窓口となって対応することが多くあります。これは単なる苦情処理ではなく、会社の信頼を守り、さらなる品質向上につなげる重要な業務です。
まず、顧客から詳しい状況をヒアリングし、可能であれば現物を回収して調査を行います。不具合の原因を科学的に分析し、なぜそれが起きたのか、他の製品にも同じ問題がないかを徹底的に調べます。
調査結果は報告書にまとめ、顧客に誠実に説明します。同時に、社内では再発防止策を立案し、必要であれば製造工程の改善や品質基準の見直しを行います。時には製品回収という重大な判断を下すこともあり、その際は迅速かつ的確な対応が求められます。
【監査対応】会社の品質システムを証明する
多くの企業では、ISO9001などの品質マネジメントシステムの認証を取得しています。これらの認証を維持するためには、定期的な監査を受ける必要があり、その対応も品質保証の重要な仕事です。
外部監査では、品質マニュアルが適切に作成されているか、実際の業務がマニュアル通りに行われているか、記録が正しく保管されているかなどがチェックされます。品質保証担当者は、これらの資料を準備し、監査員の質問に答え、指摘事項があれば改善計画を立案します。
また、内部監査の計画・実施も行います。自社の品質システムが正しく機能しているかを定期的にチェックし、問題があれば早期に発見して改善につなげる。これにより、外部監査で大きな指摘を受けることを防ぎ、継続的な品質向上を実現します。
【データ分析】品質改善のヒントを発見
品質保証の仕事では、日々大量のデータと向き合います。製造工程での検査データ、顧客からのクレーム件数、不良品の発生率など、さまざまなデータを収集・分析し、品質改善のヒントを見つけ出します。
例えば、特定の製造ラインで不良率が高い傾向があれば、その原因を追究します。季節によって品質にばらつきがあれば、温度や湿度の影響を調査します。データを可視化してグラフや表にまとめ、経営層や関係部門に報告することも重要な業務です。
最近では、AIやビッグデータ解析の技術も活用されるようになってきました。膨大なデータの中から人間では気づきにくいパターンを発見し、より効果的な品質改善につなげる取り組みも始まっています。
品質保証で活躍するために必要なスキル
品質保証の仕事で成果を出すためには、技術的な知識だけでなく、さまざまなスキルが求められます。ここでは特に重要な5つのスキルについて解説します。
データ分析力がなければ始まらない
品質保証の仕事は、データとの戦いといっても過言ではありません。日々の検査結果、不良率の推移、顧客満足度調査の結果など、扱うデータは多岐にわたります。
これらのデータを正確に読み取り、傾向を把握し、問題点を発見する力が必要です。統計学の基礎知識があると有利ですが、それ以上に大切なのは「なぜこうなったのか」を考える探究心です。
エクセルでのデータ処理はもちろん、統計解析ソフトを使いこなせるとさらに仕事の幅が広がります。ただし、ツールはあくまで手段。大切なのは、データから意味のある情報を引き出し、具体的な改善アクションにつなげる力です。
コミュニケーション力は営業並みに必要
品質保証の仕事は、想像以上に人と関わることが多い職種です。社内では開発、製造、営業など、さまざまな部門と調整を行います。社外では顧客対応や仕入先との交渉もあります。
特にクレーム対応では、怒っている顧客に対して冷静に対応し、納得してもらえるよう説明する必要があります。技術的な内容を、相手のレベルに合わせてわかりやすく伝える力も求められます。
また、品質改善のために現場の協力を得る際には、なぜその改善が必要なのか、どんなメリットがあるのかを説得力を持って伝える必要があります。時には厳しいことも言わなければならず、相手の立場を理解しながらも、品質を守るという信念を持って交渉する力が必要です。
論理的思考で問題の本質を見抜く
品質問題が発生したとき、表面的な対処では根本的な解決になりません。なぜその問題が起きたのか、真の原因は何なのかを論理的に追究する力が求められます。
例えば、ある製品で不良が発生したとき、「作業者のミス」で片付けてしまっては再発を防げません。なぜミスが起きたのか、作業手順に問題はないか、設備の調子はどうか、原材料に変化はないかなど、さまざまな角度から検証する必要があります。
この時、感情や先入観に左右されず、事実とデータに基づいて判断することが大切です。「なぜなぜ分析」などの手法を使い、問題の根本原因にたどり着くまで粘り強く追究する姿勢が求められます。
リスクを予見して先回りする力
優秀な品質保証担当者は、問題が起きてから対処するのではなく、問題が起きる前に予防します。これがリスクマネジメント力です。
新製品を開発する際、どんなリスクが潜んでいるかを事前に洗い出し、対策を講じます。過去の失敗事例を分析し、同じ轍を踏まないよう注意深く計画を立てます。
また、市場や法規制の動向にも常にアンテナを張っておく必要があります。新しい規制が施行される前に対応を完了させたり、競合他社で問題が起きた際には自社製品は大丈夫かすぐに確認したりと、先を読んで行動することが求められます。
専門知識を楽しく学び続ける姿勢
品質保証の仕事では、扱う製品に関する専門知識が不可欠です。半導体メーカーなら半導体の製造プロセスや特性、食品メーカーなら食品衛生や栄養学など、業界特有の知識が必要になります。
さらに、品質マネジメントシステムに関する知識、統計手法、関連法規など、学ぶべきことは山ほどあります。技術の進歩も早く、新しい検査方法や分析手法も次々と登場します。
これらを「勉強しなければならない」と捉えるのではなく、「新しいことを学べて楽しい」と思える人が、品質保証の仕事に向いています。セミナーへの参加、資格取得への挑戦、他社との情報交換など、積極的に学ぶ姿勢が成長につながります。
品質保証のやりがいと仕事の魅力
品質保証の仕事は責任も重く、プレッシャーもありますが、その分やりがいも大きい仕事です。実際に働いている人たちが感じている魅力について紹介します。
「あなたのおかげで助かった」その一言がすべて
品質保証の仕事で最も嬉しい瞬間は、顧客や社内の仲間から感謝されるときです。クレーム対応で誠実に対応した結果、「丁寧に説明してくれてありがとう」と言われたり、品質改善の提案が実を結んで「おかげで不良が激減した」と現場から感謝されたりすることがあります。
また、自分が品質保証に関わった製品が店頭に並び、多くの人に愛用されている様子を見ると、大きな達成感を感じます。「自分の仕事が、この製品の品質を支えているんだ」という実感は、何物にも代えがたい喜びです。
顧客からの「安心して使える」「品質が良い」という評価は、品質保証担当者にとって最高の褒め言葉。日々の地道な努力が、確実に価値を生み出していることを実感できる瞬間です。
会社の信頼を守る誇りある仕事
品質問題は、時に会社の存続を左右するほどの大きな影響を与えることがあります。逆に言えば、品質保証の仕事は会社の信頼と顧客の安全を守る、非常に重要な役割を担っているということです。
大きなクレームや品質問題を未然に防いだとき、あるいは起きてしまった問題を最小限の被害で収束させたとき、「会社を守った」という大きな達成感があります。表立って評価されることは少ないかもしれませんが、縁の下の力持ちとして会社を支えているという誇りを持って働けます。
また、品質保証の仕事を通じて、会社全体の品質意識を高めることもできます。品質の大切さを社内に浸透させ、全員で品質向上に取り組む文化を作ることも、品質保証担当者の重要な使命です。
チームで達成する充実感
品質保証の仕事は、一人で完結することはほとんどありません。重大な品質問題が発生した際には、開発、製造、営業など、部門を超えたプロジェクトチームを組んで対応にあたります。
異なる専門性を持つメンバーと協力し、知恵を出し合いながら問題を解決していくプロセスは、大変ですが非常に充実感があります。困難な課題を乗り越えたときの達成感は格別で、チームの絆も深まります。
また、品質改善活動では、現場の作業者と一緒になって改善策を考え、実行していきます。みんなで目標に向かって努力し、成果が出たときの喜びを分かち合える。これも品質保証の仕事の大きな魅力の一つです。
品質保証の仕事に就くために今からできること
品質保証の仕事に興味を持った方のために、転職成功に向けて今からできる準備について解説します。未経験からでもチャンスはありますので、諦めずにチャレンジしてみてください。
資格は必須じゃないけど、QC検定があると有利
品質保証の仕事に就くために必須の資格はありません。しかし、品質管理検定(QC検定)を持っていると、品質に関する基礎知識があることを客観的に証明でき、選考で有利になることがあります。
QC検定は4級から1級まであり、まずは3級や2級の取得を目指すのがおすすめです。統計的品質管理の基礎、QC七つ道具の使い方、品質管理の考え方などが学べます。
その他、ISO9001内部監査員の資格や、業界特有の資格(食品衛生管理者、危険物取扱者など)も、応募する企業によっては評価されます。ただし、資格よりも実務経験や人物面を重視する企業も多いので、資格取得だけに固執する必要はありません。
製造業の経験がなくても諦める必要はない
品質保証の求人では「製造業経験者歓迎」と書かれていることが多いですが、未経験者を積極的に採用している企業も少なくありません。特に若手の場合は、ポテンシャル採用として、意欲や基礎能力を評価されることがあります。
異業種からの転職でも、前職で培ったスキルが活かせることがあります。例えば、営業経験があればクレーム対応力が、事務職経験があればデータ処理能力が、接客業経験があればコミュニケーション力が評価されるかもしれません。
重要なのは、なぜ品質保証の仕事がしたいのか、自分のどんな強みが活かせるのかを明確に説明できることです。品質への関心や、モノづくりへの情熱をアピールすることで、未経験でもチャンスをつかめる可能性があります。
品質保証は社会になくてはならない仕事
品質保証の仕事は、決して派手ではありません。むしろ地道で、細かく、時にはストレスフルな仕事かもしれません。しかし、私たちの生活を支える重要な役割を担っています。
毎日使う家電製品が安全に動作するのも、口にする食品が安心して食べられるのも、車が故障せずに走るのも、すべて品質保証の仕事があってこそ。品質保証担当者の日々の努力が、社会の「当たり前」を支えているのです。
これから品質保証の仕事を目指す方は、ぜひその使命感と誇りを持って挑戦してください。あなたの細やかな気配りが、誰かの安心につながります。あなたの粘り強い改善活動が、より良い製品を生み出します。あなたの真摯な対応が、会社の信頼を守ります。
品質保証は、モノづくりの最後の砦であり、顧客との大切な接点でもあります。この仕事を通じて、社会に貢献し、自己成長を遂げることができるでしょう。ぜひ、品質保証という仕事の扉を叩いてみてください。
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